デート中のお食事会話術【女性向け恋愛コーチング16話】
前回のお話:男性を惹きつけるボディタッチ【女性向け恋愛コーチング15話】
12時10分には全員が着席している状態で席にはチラシ寿司が置かれていた。
「もしみなさんが未成年だったり二十代の若い女の子だったら問題にならないかもしれませんが、アラフォー婚活では四十にもなって食事マナーが分かっていないと思われたらおしまいですから注意しましょうね、ではいまデート中での食事だと思って頂きましょう!
ちゃんと手を合わせて頂きますは言って下さいね。」
頂きますと言った夢子は何年ぶりに食事の前に手を合わせたか記憶をたどったが、たぶん実家を出てからきちんと食事の前に手を合わせたことが無かったかもしれないと思った。
食べ始めると講師のイザベラが各自のところを回って時々机の上に黄色いカードを置いて回っていた。
「いま机の上にイエローカードを置かせて貰った方は箸の使い方を家で練習して下さい。
正しい箸の使い方が出来ている人はそれだけで食べる姿が美しく見えますし、生まれ育ちの良さを相手に感じさせますからね?
あと食事は少々美味しくなくても美味しそうに食べる事と食事のスピードを考えましょう。
女性の場合は男性と比べて食べるのが少し遅い事が多いので、相手の男性が気を使ってゆっくり食事する場合が少なくないですけど、普段から食べるのに時間がかかる人は少し速いペースを心がけて、逆に早い人は基本的にそのままのペースで問題ないと思います。」
彼氏と食事する時の会話について
「まだ彼氏未満と言うかシュチエーションとしてお見合いとか婚活イベントでうまく行って、初めて二人っきりで食事をする場合も会話ということでお話しますが、基本は楽しく美味しくリラックスしていることが大切です。
食事の話題は趣味のことでも好きな食べ物の事でも、知りたいことを相手に質問するのも有りですし、自分ばかり話さないで相手の話を聞くこともそれ以上に大切なのですが、リラックスしていないといろいろ考えてしまって上手くいかないのです。」
1分で緊張をほぐしてリラックスする
「では緊張している時にすばやく気持ちを解きほぐして楽しくデート中の食事の会話をするためのオマジナイを教えます。」
イザベラが上に差し出した掌には赤いマークが付いていた。
「掌の親指と人差指の付け根あたりを左右それぞれ30秒間もみほぐしながら、私はリラックスしていると小さい声で構わないので繰り返し唱えれば大丈夫ですよ!
もちろん相手の目の前でこれは出来ませんから、緊張して失敗しそうだと思ったら化粧室に行ってやってみて下さい、必ずリラックス出来ますからね。」
夢子も無言で左右の自分の手のひらで教わった場所を押して揉みほぐしてみたが、元々緊張していなかったので、果たして効果があるのかどうかは分からなかった。
「ではこれからの時間は食事をしながら隣の方と会話を楽しみながら食事を続けて下さい。」
夢子の隣に座っていたのはメガネをかけた冷たそうな女性だったが向こうから話しかけてきた。
「この年になっちゃたら周りがどう思っても積極的に攻めていかないと、誰かが自分の事を見つけてくれて白馬に乗って迎えに来るなんて甘いことを考えてちゃダメって事ですよね?」
「そうですよね、男が見つけてくれるのを待っていてもやっぱり若い子に目が行って、恋愛対象外になっている場合が多いみたいですからね?
こっちが見つけた!と思っても相手が見つけられた!と思うとは限らないですからね?
お見合いとか結構やってます?」
夢子の不躾とも思える質問にも即答してくれた。
「もうお見合いは20回以上、婚活パーティーの類にも山程顔を出した時期があるけど、そっちは壁の花で終わる事ばっかりだし、かえって自分に自信がなくなっちゃうから一年くらい行ってないですね。
結婚相談所の人からは年上の男性なら可能性は高いって言われてるけど、これから子供を作って成人するまでの事を考えると、45歳位が上限って希望だけどこれでも結構難しいのが現実なんですよね。」
確かに年相応の外見だったしメガネの顔が冷たいイメージを醸し出していたので、ライバルが沢山出席するような婚活イベントではかなり不利だと思ったが、よく考えてみると夢子自身も同じような立場なんだと思った。
「中には結構いい線まで言った人もいらっしゃったんですよね?」
口に出してからこれでは男性とデートする時に練習も何も、気持ちが落ち込むような内容だと思ったが、もう口から出た言葉を消すことが出来なかった。
「最初のデートに辿り着くのも難しくて、で何とかしなくちゃって今このセミナーに出席しているんだけど、言われたとおり頑張ってダメだったら諦めるつもり。」
会場内で受講生同士の会話が弾んでいないことを感じたのか再び演台に立ったイザベラが口を開いて話を始めた。
「自分に興味を持って貰うにはやっぱり相手にも興味を持たなければコミュニケーションを取るのが難しくなりますし、お互いが黙ってしまって沈黙の時間が流れる原因は相手に興味が無いという事です。
向こうだって貴女に興味がなければ何も知りたいとは思わないでしょうし、逆に行為を持っていたら色々知りたいと思うのは男でも女でも同じことです。
相手に興味があれば趣味でも仕事でも家族のことでも最近見た映画のことでも話題は幾らでも出てきます、ただし女性の場合は発言は控えめにして男性の聞き役に回るよに心がけて下さい。
沈黙が支配しそうになったらすばやく新しい話題を切り出す形が良いですね」
中々難しいものだと思ったがとにかくイザベルの話を聞いていた。
「デートでも落ち合って即!ボデイタッチに成功すれば二人の距離はそれだけで近くなっているから会話も自然とスムーズに運ぶようになるし、逆に最初から他人行儀と言うか余所余所しいままで食事になったら苦労しますから、スタートはボデイタッチにかかっていますからね?」
たぶん四十過ぎて婚期を逃しているという事は恋愛スイッチの場所すら分からなくなっているかもなので、単に気持ちの問題ではなく具体的な行動で気持ちを動かさないと、現実は変わらないのだろうと、イザベルの言葉を肯定的に受け止めようと夢子は考えた。
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