彼氏を引き寄せる【女性向け恋愛コーチング36話】
前回のお話:旅先での出会い【女性向け恋愛コーチング35話】
「お一人でしたら暫く一緒に飲みませんか?」
声をかけられた夢子だったが生まれてこのかた男性からこんな風に声をかけられたのは初めての経験で、さっきまで自分から男性にアタックしていたのが不思議なくらいだった。
一応情報では飲み屋で彼女を作るというシチュエーションも少なくないとは聞いていたが、まさか自分がそうなるとは夢にも思っていなかった。
心の中ではご利益キター!みたいな感じであったが、余り嬉しそうにするのもどうかと思ったので曖昧な笑顔を浮かべて軽くうなずいた。
「観光でいらっしゃった方ですか?私は仕事の関係でこっちに来まして、今は深夜バスに乗るまでの時間つぶしです。
たまたま隣に座った方もお一人のようでしたので失礼ながら声をかけさせて頂きました。
まだ時間も沢山ありますし、一人より誰かとお話していたほうが楽しいですからね?」
知性を感じる話し方でなんとなく営業関係の仕事をしているように感じた。
夢子の頭の中にまた”旅の恥はかき捨て”というフレーズが浮かんで、せっかく八坂神社の取り計らいでこうなったのだから積極的に行こうと思った。
「私も深夜バスの時間待ちで~す。
何故か思い立って京都に来て、観光地を一人で見て回って今日帰ります。」
「私は一日仕事で観光どころじゃ無くて、やっといま一息ついたところですけど、今日はどちらに行かれたのですか?」
「稲荷神社と祇園に行ってきました、ほんと外国人の観光客が多いですよね?」
「そうですよね、今の京都で観光地を歩いているのは外人さんばっかりですよね?」
ここで夢子はカマをかけて相手が独身者かどうか探ってみる事にした。
「思い立った一人旅なので何のお土産も買っていないのですけど、お子さんに何か買って帰るのですか?」
男性はびっくりした表情で言った。
「えっ!子供がいるように見えますか?まだ独身なんですけど!」
夢子は心の中でガッツポーズをして素早く答えた。
「ごめんなさい落ち着いて見えたものですからつい・・あの私は夢子と申します。」
「いいえどういたしまして中村元と申します。
お店に入ったら夢子さんの姿が目に入って、なんとなく引き寄せられるような感じで隣りに座ってしまいました。
それでダメ元で声をかけたんですよ。」
「有難うございます、元さんはどちらからいらっしゃったんですか?」
「はい、埼玉県大宮市からですけど本社が京都にある会社に勤めているので、月に一回のペースでこちらに来ている感じですね。
夢子さんはどちらからいらっしゃったんですか?」
「はい千葉県から来ました。
実は最近失恋してしまいまして、京都に来たのも思い立って縁結びで有名な神社にお参りに来たのですけど、お参りしたその日にこうやって男の人から声をかけられて本当にびっくりしているんです。」
「それってシンクロニシティとか引き寄せって言われるやつですかね?わたしは詳しくないですけど。」
「わたしもよくわからないのですけど、今日こうやって元さんが声をかけてきたって事は、何か見えない力があるのかもしれないですね?
ところで元さんが東京に帰るバスは何時ですか?」
「8時出発で30分前には行っておく必要がありますから、あと一時間位ですね。」
あと一時間をどうしようか夢子の頭はフル回転を始めた。
そして出来るだけ相手の情報を集めて仲良くなって連絡先の交換をすることを最優先にしようと思った。
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