焦って婚活に失敗した兄の話【女性向け恋愛コーチング42話】
前回のお話:結婚相手の年収VS貯蓄額【女性向け恋愛コーチング41話】
元に案内されたお店は静かなお店で雰囲気も良かった。
「元さんはどちらのご出身ですか?」
「はい北海道の出身です。
両親は北海道で喫茶店をやっていましして、兄にお店を継いで欲しいと思っているらしいのですけど、兄には全然その気がなくてサラリーマンをやって両親と同居しています。」
という事は仮に結婚しても相手の両親と同居する必要も無いみたいなので安心した。
夢子は自分自身が四十を過ぎてしまっているせいなのか、生身の本人の事よりも収入や家族の事など周りのスペックを気にしているのだが、相反するように焦りを感じて相当積極的になっている自分がいて、よく分からなくなっていた。
ひとしきりお互いの家庭環境についての話をして、その話題について終わった頃に夢子は思いきって話題を結婚について振ってみた。
焦って婚活に失敗した兄の話
「正直に本音だけで話しちゃうと、わたし四十を超えてから結婚を意識したんだけど、もうそれは焦りを感じてという表現がピッタリする婚活で、京都に行って縁結びの神様にお願いに行ったのも、まさに神頼みそのものだったんですよ。
元さんは結婚に対して焦りとか有るんですか?」
「私に兄がいる事はさっきお話した通りですけど、私より5歳年上だから夢子さんと同い年で自分で結婚難民認定を受けたって自嘲してよく話してますよ。
で私は兄が結婚を諦めてしまったのは焦りすぎたんじゃないかと思っているのですよ。」
「とっても気になります、詳しく聞かせて貰えますか?」
「私も詳しくは知らないのですけど知っていおる範囲で話しますと、
私の兄は恋人以前に友達すらいないような人で、兄が友達を家に連れてきた事を一度も見た事がないような人でした。
そんな彼が四十になって結婚に対する両親のプレッシャーもあって、結婚相談所をはじめとした色々な所に登録して、それでお見合いとか出会いを繰り返す事になるのですけど、なにせ異性経験が無いわけですから、相手と適切な距離を保てないと言いますか、ちょっと知り合いになると、もうせっせとラブレターを書いてみたり一日に何通もメールを送ってみたり、普通の女の人だったら引くに決っているような事を繰り返していました。
結果は言うまでも無く結婚相談所からは強制退会になるし、とうぜん全ての女性からはキッパリお断りの連続で、2年位の婚活期間を高い授業料を払っただけで終わりまして、たぶんも婚活をする事は無いでしょうね。
まぁ身内としてはストーカーにならなかったのが幸いみたいな感じでしたから、やっぱり仕事にしても婚活にしても焦って良いことは一つもないって感じですね。」
「私も気をつけなくちゃいけませんね♪」
と笑顔で返した夢子だったが自分が元さんに、どんな風に思われているのか、やっぱり焦っていると思われているのか少し心配になった。
夢子としてはこのお店で更に二人の距離を縮めて、あわゆくばそのままホテルで朝帰りなどと考えていたのだったが、少し冷静になるべきかなとも思った。
「私も仕事は営業で新規顧客開拓を主にやっているわけですけど、焦ると結果が出ないのは恋愛と全く一緒だと思うのですよ。
もちろん一生懸命になって自分を売り込むのは恋愛も全く同じで、焦らないと必要なことをしないは同じではないのですけど、相手には相手の意志も感情もあるのですから、こっちが焦っていると思われるようなアプローチには十分気をつけなくちゃいけませんね。」
「焦ると周りが見えなくなりますからね。」
「私の場合、低収入という理由も有りましたけど兄を見ていたので逆に積極的になれなくて、このあいだは夢子さんから誘って下さったので、こうやって今2人で食事しているわけですけど、そうじゃなかったら自分から積極的に誘えたかどうかは良くわかりません。」
「隣りに座って声をかけて頂いた時は自然な感じで焦って女性を探しているようには感じませんでしたから全然大丈夫ですよ。」
時計を見ると夜九時半を過ぎていた。
今日はこのお店で御仕舞いにするのか、今夜は家に帰らないつもりで行動するのか決めるべき時間が来ているような気がした。
「じゃもう遅いですし最後の一杯を注文しましょう。」
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